バイデン氏、あつ森に現る
アメリカ大統領選で立候補するジョー・バイデン氏が選挙活動において、任天堂の大ヒットゲーム「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」を活用したことで話題となりました。
バイデン氏はゲーム内に選挙本部を設置しています。
色々な形で全米にアプローチしていく狙いがあるようですが、具体的にどのようにあつ森を活用しているのでしょうか?
今回は、バイデン氏のあつ森を使った選挙活動の方法についてご紹介します。
ジョー・バイデン氏とは
バイデン氏は、東部ペンシルベニア州スクラントンで生まれた、アメリカの政治家です。
オバマ政権時代には、副大統領を務めています。
バイデン氏は、弁護士として活躍していた経歴があります。
後に地元の郡議会議員を務め、1972年、29歳の時に上院議員に初当選を果たしました。
35年間もデラウェア州で上院議員を務め、さらに長きにわたり司法委員会や外交委員会に属し、委員長を務めた経験もあります。
そのため、外交経験が少なかったオバマ氏を支えていた重要な人物の1人でした。
バイデン氏は24歳で結婚をしています。
その当時から将来の夢は大統領でした。
そして、副大統領の経験もある彼は、2020年の大統領選で民主党から立候補します。
共和党のトランプ氏との対抗出馬に世間の注目が集まっています。
あつ森を使った選挙活動とは
あつまれ どうぶつの森は、プレイヤーが無人島を自由に開拓していくコミュニケーションゲームです。
元々、どうぶつの森は任天堂のゲームの中でも屈指の人気を誇りますが、2020年3月20日の発売以降、当時新型コロナウイルスの流行により外出の自粛期間と重なったこともあり、巣ごもりに最適なゲームとして全世界で大ヒットしました。
その注目度を活かしてバイデン氏は「バイデンHQ(Biden HQ)」という島を作成し、ゲームを使った選挙活動を始めます。
具体的にどのような方法で選挙活動につなげているのでしょうか?
・プレイヤーの島訪問
あつ森では他プレイヤーの島に訪問できるシステムがあります。
ローカル通信やオンラインで直接島に行けるシステムとは別に、島の情報を登録し、疑似的に訪問が可能な「夢見」が夏のアップデートで追加されました。
これは、夢番地と呼ばれるコードを入力し、公開されている島に訪問できる通信システムです。
バイデン氏もバイデンHQの夢番地を公開しており、誰でも自由に島を見学できます。
島にはホワイトハウス見立てた住宅、アメリカの国旗を模した花畑などこだわって作られたスポットが豊富です。
他にも島のいたるところに選挙ポスターがあり、さらに民主党全国委員会が運営するwebサイトの「IWillVote.com」の告知、好物のアイスクリームスタンドなども見られます。
島にはバイデン氏に似せて、銀髪に黒いサングラス・スーツ姿の住民の姿も目撃でき、話しかけると選挙戦のスローガンを発言してくれます。
ゲームのカメラ機能を使い、一緒に写真撮影をすることも可能です。
ちなみに夢番地のコードは「DA-7286-5710-7478」です。
・マイデザインの配信
どうぶつの森では、マイデザインという機能があります。
独自で作ったドット絵を看板や服、住宅の床・壁などに反映できるシステムです。
島で使われている選挙ポスターやIWillVote.comの告知なども全てマイデザインによって再現されています。
このマイデザはオンラインで公開し、他のプレイヤーはダウンロードをして自由に使うことが可能です。
バイデン氏の選挙キャンペーンサイトでは、「チームジョー」やトレードマークのサングラスを模したデザイン、LGBTQの支持を示したような虹色ストライプのロゴなど4種類のマイデザインの配信コードを公開しています。
他にも、バイデン氏の名前入りデザインで洋服用のマイデザインの配布も行っています。
配信されるマイデザインは今後も増えていくでしょう。
公開されているデザインは作者ID「MA-6804-3564-2960」で検索すると、閲覧やダウンロードが可能です。
デジタル技術を積極的に活用するバイデン氏
元々、バイデン氏陣営は選挙活動にデジタル技術を取り入れていることで有名です。
民主党全国大会においてもバーチャル方式で開催を行いました。
新型コロナウイルスの影響はまだまだ続いており、その中でスムーズに選挙活動を行うためにデジタル技術を駆使しているのでしょう。
また、11月3日の選挙日に近付いてきたことから、全米のあらゆる場所・年齢の有権者にバイデン氏をアピールするために大ヒットのあつ森の活用を決めたそうです。
この取り組みは米国民だけではなく、日本人など他の国のプレイヤーにも注目が集まるきっかけとなりました。
さらに、バイデン氏の島を訪問しようとソフトの販売をより押し上げる要素にもなっているようです。
ゲームを選挙活動に使うケースはバイデン氏が初めてというわけではありません。
過去には、オバマ氏もゲーム内にキャンペーンで看板を立てています。
また、ヒラリー・クリントン氏もポケモンGOのポケストップにてイベントを開き、有権者の登録を促していました。
一方、トランプ氏陣営はあつ森及びゲームの利用は考えていないようです。
あつ森の政治利用は問題ないのか?
あつ森はマイデザイン機能が前作よりもパワーアップし、より高度なデザインを作れるようになったことから多くの企業が商品やブランドの紹介に活用されています。
政治的な利用では、香港のデモでも使われていました。
一方、日本でもあつ森を政治で活用しようとした事例があります。
自民党の石破茂氏は、自民党総裁選に向けてあつ森の活用を自身のYouTube動画で告知しました。
バイデン氏同様に石破氏のポスターを模したマイデザインの配布、プレイヤーの島に訪問して有権者との交流を図るという内容でした。
支持獲得のために、バイデン氏の事例を参考にしたのだと思われます。
しかし、Twitterでは「利用規約の違反では?」という指摘が殺到し、計画を断念されました。
ニンテンドーアカウント利用規約によれば、禁止事項に「政治的または宗教的な主張を含むもの」とあるので、基本的にゲームの政治利用は禁止となっています。
ところが、ユーザーコンテンツの共有や送信において、任天堂が特別に許可した場合は例外というような記述もあります。
ちなみに任天堂は同規約に違反するかどうかは確認段階でコメントは差し控える見解を見せていました。
ゲームを使った政治活動が規約違反になるとすれば、バイデン氏のあつ森活用も違反に当たります。
しかし、石破氏の件で問題になったのは、あくまでも日本国内での規約違反になってしまうためです。
アメリカの任天堂の規約では、政治的・宗教的な活用に関する禁止事項は設けられていないようです。
そのため、今回あつ森を使った政治利用は特に指摘されなかったのでしょう。
あつ森を選挙活動に活動したバイデン氏は、若者を中心に全米の有権者に広くアピールできたことでしょう。
メディアでも話題になり、バイデンHQ島の存在は日本など世界のプレイヤーにも注目されることになりました。
基本的に日本では政治活動の利用は規約違反になる可能性がありますが、アメリカは規約が違うので、違反かどうかははっきりしていません。
それでも、話題性は抜群であり、選挙への関心を高めるきっかけになったことは間違いないはずです。
コロナ禍で通常どおりの選挙活動ができない状況であるため、デジタル技術の活用は必然と言えるでしょう。
バイデン氏陣営は積極的にデジタル技術を用いているので、今後もユニークな発想で政治活動を繰り広げていくと予想されます。
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