外出自粛でストレス溜まった人に読んで欲しい、文豪たちの悪口集
誰しもが生活の中で悪口を言いたくなる瞬間はあるものです。「腹が立つ」「イライラする」といったことは、仕事や人間関係などで起こりやすいと言えます。
ただ、今回のコロナウィルスの影響を受けて、自宅待機や外出自粛になった件でストレスを溜めている方も多いでしょう。特別に何か嫌なことがあったわけではないけれど、妙にモヤモヤというか、居心地悪い気がするということもあります。そんな方は、文豪たちの悪口でストレスを発散すると良いでしょう。
そこで今回は、外出自粛でストレス溜まった人に読んでほしい、文豪たちの悪口集についてご紹介します。
文豪たちの悪口集が一時期、話題になった!
文豪たちの悪口を集めた『文豪たちの悪口本』が、2019年に一時期話題になったのを知っていますか?2019年7月頃に本屋の検索ランキングの上位に入ってきて、注目度が高めました。きっかけはTwitterとのことですが、タイトルのインパクトも強いので、本屋で見かけたらつい気になってしまうでしょう。
以前流行った本ではありますが、文豪同士のケンカやいざこざを収録した本は、外出自粛でストレスが溜まっている今こそ読みたい本です。家の中で読めて、しかも心の中だけでストレス解消できるのも大きなメリットです。
いつの時代も悪口はあるもの。人が悪口言う心理とは?
文豪たちの悪口集は、その名の通り、文豪の愚痴や不満、言い争いに関する言葉をまとめた本です。いつの時代にも悪口は変わらないと言えますが、そもそも人が悪口を言うのはなぜなのでしょうか?
ストレス解消
悪口を言ってしまう一つの原因は、ストレスによるものです。悪口をよく言う人は、自分を気づけた人や気にくわない人の悪口を言って、ストレス解消しているのでしょう。
人はイライラしているとこの溜まったストレスをどうにか吐き出したいと考えます。ストレス発散にはスポーツなど体を動かす方法や、お金を使って好きなものを買いまくるなどの方法があります。悪口を言うのも、そのストレス解消の一つの手段です。
悪口を言ってしまう原因の中では、一般的にイメージしやすく、理解しやすいと言えます。
安心したい
自分が安心したくて、悪口を言う時もあります。安心というとイメージしにくいかもしれませんが、要は相手の欠点を指摘して、自分と同列の人間だと示したいのです。たとえば、自分より優秀な同僚がいたとして、「あいつはすごいな」と思ってばかりいると自分がみじめになってくることがあります。
また、相手が素晴らしい人間性を持っていると、「何かダメなところはないか」とあら探しをする人もいます。相手の悪いところを見つけて、「自分はあの人こうなんだ」ということで安心感を得たい気持ちがあるのです。
嫉妬している
相手を羨ましがる嫉妬心から、つい悪口を言ってしまう人もいます。本当は憧れの気持ちがあるのだけれども、それを認めてしまうと悔しいため、気持ちを隠すために悪口を言うのです。
クセになっている
職場でも飲みの場でもあちこちで悪口を言っている人は、悪口を言うのが習慣化している可能性があります。もしかしたら自分が悪口を言っているという自覚がないこともあるので、真偽のほどは本人に聞いてみないと分かりません。クセになるほど悪口が染みついている人というのは、心が寂しい人でもあるとされます。
心が満たされていないため、平穏をつくるために悪口を言ってバランスを取っています。
外出自粛でストレス溜まった人おすすめ!文豪たちの悪口集
文豪たちの悪口集である、彩図社文芸部編『文豪たちの悪口本』は、外出自粛でストレスが溜まっている方におすすめの一冊です。文豪同士のケンカや家族へのあてつけ、世間への愚痴などが書かれた本からは、「歴史に名を残す文豪は、どんな悪口を言ったのか」が分かります。
随筆、日記、手紙、友人や家族の証言から、文豪の人柄が感じられる文章だけが選抜されています。現世にまで知られる文豪たちも、私たちと同じように悪口を言っていたのだと分かるエピソードが満載です。
ここでは、一部どのような内容かをご紹介します。
太宰治
文豪たちの悪口集は8章のエピソードで成り立っていますが、そのトップバッターとして登場するのが、太宰治です。太宰治は『人間失格』や『斜陽』などの作品を残した知名度の高い作家ですが、日本で最も有名とされる芥川賞には候補となるも、落選しています。その時の選考委員の一人が、川端康成でした。
川端康成が別の作品を推薦したため、太宰の作品は次席となり、芥川賞を逃すこととなりました。当時、太宰には500万円の借金もあり、どうしても賞がほしかったため、太宰は川端に対する抗議文を『文藝通信』に投稿します。そこには太宰の怒りや悲しみが書き綴ってあり、「刺す」という言葉を川端に告げました。
強烈な言葉であったので、後に川端は抗議文に対して自分の意見を改めて発表しています。
中原中也
中原中也は、本書で周囲の人に手当たり次第に絡んでいたと言われています。「サーカス」など著名な作品に今でもファンが多くいる作家ですが、当時はとんでもない悪口で問題になっていたようです。
中原はダダイズムという既成概念を打ち払う芸術活動に参画しており、破壊的な思想を持っていました。そのため日常生活でも普通等が違った行動を取って、友人を困らせる場面も多くあったとされます。先の太宰治も中原に絡まれた一人であり、中原のことを「蛞蝓(なめくじ)みたいにてらてらした奴で、とてもつきあえた代物ではない」と悪口をこぼしています。
一方で中原は初対面の太宰に対して「何だ、おめえは。青鯖(あおさば)が空に 浮かんだような顔をしやがって。」と発言しています。尊敬していた太宰は、中原のあまりの悪口に会話できないほど落ち込んだようです。悪口ではありますが、文豪ならではの例えと言えるでしょう。
ただ、中原のダイナミックな言動に惹かれる人も多かったとされます。今の時代もそうですが、自分には言えないようなことを言ってくれる存在に憧れる人もいるということでしょう。
永井荷風と菊池寛
『地獄の花』『あめりか物語』『ふらんす物語』などを発表した永井荷風は、菊池寛を嫌っていました。
理由は、永井が菊池の先祖にあたる漢詩人・菊池五山のことを雑誌で書いた際、「池」の字を「地」と間違えたことを『文藝春秋』で指摘されたからです。単純な誤字ではありましたが、菊池も先祖と言うことで無視できない内容だったのでしょう。
永井としては恥をかかされたので報復として、『断腸亭日乗』に「菊池は性質野卑(やひ)奸(かん)キツ(キツはけものへんに橘の右側)、交を訂(てい)すべき人物にあらず」と悪口を綴っています。だいたいの意味は、「ねちねちと仲間と一緒になって、ヤなことをする奴」といった内容です。
実際の菊池は気さくで楽しい人柄でありましたが、一人を愛した菊池にとってはそのように映ったようです。
コロナの影響で外出自粛となったため、ストレスが溜まり、悪口を言いたくなるのも頷けます。しかし、誰かに暴言を吐いたり、八つ当たりしたりしてストレスを発散するわけにはいかないので、ストレスを吐き出したい人は、文豪たちの悪口集を読んでみると良いでしょう。
悪口にもさまざまな種類がありますが、文豪の使う表現は知的な要素とセンスが感じられます。文豪たちの悪口集に登場する人物は、国語の教科書で見たことあるような作家が多いので、「この人もこんな悪口を言っていたのか」と新たな発見があるでしょう。
ぜひ言葉の扱いを生業とする作家ならではの表現を、堪能してみてください。
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。