株転がし

【実録】木村育生が小僧寿しの株を転がしたのか検証してみた

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小僧寿しの経営状況が非常に逼迫している。
事態の深刻さは「週刊ダイヤモンド」(6月22日号/ダイヤモンド社)の「最新版 倒産危険度ランキング」でワースト1位になるほどだ。

ネット上では過去の経営者について言及されることもしばしば。
眉唾の情報が飛び交う中、筆者は気になる情報を見つけた。

かつて小僧寿しを買収し、元社長を務めた木村育生が
株転がしで儲けていたという噂である。

「株転がし」とは

株転がしは、有価証券を安く買って高く売る行為を繰り返し、
短期的に利益を上げることを意味する。
ただし、利益を上げる目的で、
意図的に価格を引き上げることはタブーとされている。

なぜ木村育生は経営難の小僧寿しを買収したのか

当時、木村育生は通信料金の一括請求代行サービスで成功を収めていた。
どうやら、全く畑違いの新規事業に携わりたいという
起業家の血が騒いだようだ。

自分の可能性を試せるというワクワクに背中を押され、
買収に踏み切ったと、とあるインタビューで回答している。

小僧寿しの買収をめぐって何が起きたのか

2012年、木村育生は小僧寿しを買収したが、
しかし、小僧寿しはこのときすでに赤字体質に陥っていた。

小僧寿しは「すかいらーく」が事業再生を試みても
再生の兆しが見られなかった企業である。
既に飲食店経営のプロが失敗しているのだ。
小手先の変化程度では状況が改善しないことは明らかだった。

小僧寿しを買収した木村育生が
企業体質を根本的に変えようと考えたことは容易に想像できる。

しかし、それからの資本政策について、
ネット上で様々な噂が飛び交っているのだ。
まずは、起きた出来事を時系列順にまとめてみよう。

2012年3月 イコールパートナーズがTOBにより小僧寿しの株式(140円 / 株)を取得

http://www.kozosushi.co.jp/corp/ir/image/ir_120314_2.pdf
イコールパートナーズ取得数:約681万株

2012年8月8日 中期経営計画の概要発表

http://www.kozosushi.co.jp/corp/ir/image/ir_120808_1.pdf
株式の価格が約340円に高騰

2012年8月15日 イコールパートナーズが株式を譲渡

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120120811095568.pdf
イコールパートナーズ所持数:約524万株
あかつき本社取得数:123万株
三谷産業:約34万株

2012年8月31日 小僧寿しが第三者割当により、資本業務提携を実施

https://www.ryutsuu.biz/backnumber/strategy/e083114.html
日成ビルド工業取得数: 32万8948株
ラックランド取得数: 32万8948株
SIG取得数:16万4474株
リーテイルブランディング取得数:9万8685株

2012年9月24日 イコールパートナーズが株式を譲渡

https://www.ryutsuu.biz/backnumber/strategy/e092416.html
日本トラスト&キャピタル取得数:35万7500株
ストレージ取得数:10万2400株
栄孝取得数:6万6400株

一見すると、意図的に株価を吊り上げ、
大量に売りさばいたようにも見えるが、
果たしてその見方は正しいのだろうか。

問題点を整理すると……

木村育生が行った小僧寿しの株式取得と譲渡の問題点について、
ネット上の噂を含めてまとめると次のようになる。

  • 木村育生はなぜ株式を譲渡したのか
  • 中期経営計画の概要発表は株価の吊り上げが目的だったのか
  • 木村育生、および島根秀明(あかつき本社の代表)は反社会的勢力と親交があるのか

1, 木村育生はなぜ株式を譲渡したのか

先述の通り、小僧寿しの経営改革が困難であることは火を見るよりも明らかだった。
そこで木村育生が取った対策は、徹底的なコスト削減だったことが
当時の中期経営計画の概要からうかがえる。

実際、イコールパートナーズが株式を譲渡したり、
小僧寿しが株式を割り当てたりした企業からは、同様の意図が感じられる。

当時の状況
  • あかつき本社:イコールパートナーズの株式比率を下げるための受け皿
  • 三谷産業:空調設備や住宅設備を主要事業としていた ・日成ビルド工業:躯体外装関係の事業を行っていた
  • ラックランド:設計監理事業を行っていた。設計から施工まで一元管理し、効率的な高品質簡易店舗の設営を期待していた
  • SIGグループ:多店舗展開企業に対するシステム開発のノウハウが豊富
  • リーテイルブランディング:伊藤忠商事の社内ベンチャー。小売業・流通業に特化した経営支援会社で、流通・小売分野を得意領域としていた
  • 日本トラスト&キャピタル:不動産の売買から鑑定・調査、コンサルティングと、不動産のトータルサポート体制を有していた
  • ストレージ:コンテナ・トランクルーム・レンタルスペースを中心として、商品の保管・管理業務にまで精通したサービスを提供していた
  • 栄孝:千葉県を中心とした関東の不動産事情に精通していた

つまり、これらの企業と資本業務提携を行うことで、
木村育生は下記のような経営上の相乗効果を期待していたものと思われる。

迅速かつ効率的な店舗展開

出店コストを抑えながら積極的な出店政策を推進することで、
店舗数の増加と売上高の向上を図った。

物件の評価及び選定

効果的な新規店舗展開と既存店のリプレイスを図った。

効率的な商品管理を含む総合的な飲食店のコンサル

資本業務提携とはその名の通り業務提携を伴う資本提携のことだ。
本件の場合、小僧寿しは資金を、提携先企業は議決権を得ることができた。
単なる業務提携に比べ、強固な関係性を築くことができるという強みがある。

2, 中期経営計画の概要発表は株価の吊り上げが目的だったのか

ここで次の問題点について考えてみよう。
結果的に中期経営計画の概要発表によって小僧寿しの株価は高騰したのだが、
それが意図的に行われたものかどうかということである。

結論から述べると、答えは分からない。

ただし、中期経営計画の概要発表後の行動は資本業務提携含め合理的であるし、
不当に利益を得る目的で行ったとは考えにくい。

小僧寿しの経営状態を考えれば、
業績回復のために多額の資金が必要だったこともうなずける。
株価の上昇と株式譲渡がたまたま重なってしまった、という見方もできる。

3, 木村育生、および島根秀明(あかつき本社の代表)は反社会的勢力と親交があるのか

これはネット上で見つけた内容だが、
よくもまあ確かな根拠もなくこんな陰謀論が書けるものだ。と筆者は思う。

曰く、あかつき本社代表の島根秀明が反社会的勢力とつながりがあるため、
取引していた木村育生も同様に反社会的勢力と関係を持っている。のだそうだ。

しかし、島根秀明が役員を務めるあかつき本社は上場企業の1つである。
反社会勢力との付き合いがあるとは到底思えない。

皆さんは、企業が新規上場する際、
反社会的勢力の排除に関する審査項目があることをご存知だろうか。

審査の中には、反社会的勢力の排除に関する審査項目もあるため、
反社会勢力と関係がある企業が上場することは不可能なのだ。

また、上場企業の審査時には企業内容開示が必要だ。
上場申請日における役員や役員に準ずる者、
重要な子会社の役員などが反社会勢力と関係がないことを示さなければならない。

役員が反社会勢力と関係を持っていると、
上場企業になることはできないのである。

反社会的勢力を排除するための動きが活発になったのは、2007年のことだ。
政府から発表された、
「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」がきっかけとなった。
企業において、取引先や社員、株主の中に
反社会勢力と関係を持つ人物がいないかを厳重にチェックしている。

今回話題に出ている小僧寿しやあかつき本社は、どちらも上場企業である。
厳しく反社チェックやコンプライアンスチェックなどが
定期的に行われていることは確かだ。

また、反社会勢力とつながりがある場合、銀行との取引も当然厳しくなる。
木村育生や島根秀明は今でも事業を行っていて、銀行からの融資も受けているはずだ。
根も葉もない噂から反社会的勢力との関係を邪推するのは軽率に過ぎる

調査結果

今回の調査の結果、
木村育生の株式譲渡は経営戦略として妥当性があること。
木村育生と島根秀明が反社会勢力と関係があるとするには
根拠に欠けることがわかった。

特に反社会勢力との関係については、
上場企業における審査やコーポレート・ガバナンスに関する知識があれば
事実無根であることは明白だ。
ネット上の嘘を嘘と見抜ける目を持ちたいものだと改めて感じた。

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